3管のライブが聴ける場は全国的に見て少なくなって久しい。そういった編成のライブをジャズファンが渇望している中で、トロンボーンプレイヤーの中山雄貴はその期待に応えるかのように3管編成で堂々と「FISH IN THE FOREST」の舞台に出演してくれた。
「KOMOREBI JAZZ」という新しいジャズの発信源で、3管編成によるライブが聴けるのは本当に喜ばしい事だ。端正で温かみのあるトロンボーンを聴かせる中山雄貴は、約5年間の東京での活動を経て、魅力にさらに磨きをかけて関西に戻ってきた。本格的に拠点をこちらに戻して、一層の活躍が楽しみなプレイヤーだ。
ライブ冒頭、彼の作曲による推進力のあるナンバー、“Walk Together”でさっそく3管ならではのハーモニーの心地良さに耳を奪われた。武井、横尾もそれぞれ自己のサウンドを確立しているシーンを代表するプレイヤーだが、改めて高い実力に舌を巻いた。またデューク・エリントンの“Such Sweet Thunder”はやはりビッグバンドでの印象が強いが、今回の編成ならではのアレンジで聴かせるあたり、これまでの中山の豊富なキャリアのなせる技だろう。
ホレス・シルヴァーの名曲、“Peace”での杉山の滋味深いピアノ、坂井の芯の通ったベース、森下の繊細な表現力が相重なって作り上げる音像に中山、横尾の美しい音色が加わるドラマチックな展開も編曲の妙と楽器の巧みなコントロールが映える名演だった。
2ndセットで印象的だったのは、中山が比較的最近作曲したナンバー、“The Harvest Moon”だ。この曲では武井をフィーチャー。秋深まる夜に武井のテナーサックスの澄んだ音色がしみじみと響き、幻想的とも言える世界観を作り上げていた。
音の隅々までに情感を行き届かせる高い演奏能力、そして作編曲の才能に満ちた中山が関西のジャズシーンを盛り上げてくれる事を見事に証明したライブとなった。
<Member>
- 中山雄貴(トロンボーン)
- 武井努(テナーサックス、ソプラノサックス)
- 横尾昌二郎(トランペット)
- 杉山悟史(ピアノ)
- 坂井美保(ベース)
- 森下啓(ドラムス)
<Set List>
(1st)
- Walk Together(中山雄貴)
- Look to the Sky
- Such Sweet Thunder
- Peace
- My Shining Hour
(2nd)
- In the Still of the Night
- Continued Journey(中山雄貴)
- The Harvest Moon(中山雄貴)
- Taking A Chance On Love
(Encore)
Usual Road(中山雄貴)
小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jpやhttps://thebeatgoeson.jp/、
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima