「KOMOREBI JAZZ」初のピアノトリオ編成での出演となった「小林沙桜里TRIO」。
今回のリーダーである小林沙桜里は、ジャズのみならず様々なジャンル、ライブシーンで活躍中のピアニストだ。オルガンでの演奏も積極的に行っており、オルガントリオ「JC&C」で既に2枚のアルバムをリリースしている。今回のベース、ドラムスとのシンプルな編成での出演は「ジャズピアニスト」としての彼女の魅力に焦点を当てる打ってつけの編成だろう。
「TOOTH TOOTH FISH IN THE FOREST」のホール環境に似た開放感のある空間に響きわたる小林の華麗なピアノの音色。リハーサルの時から美しい音に聴き惚れた。
ステージが始まると、フレッシュなリズム隊に支えられて、小林が小気味良くご機嫌な旋律を奏でていく。セットリストをご覧になっていただけたらわかる通り、まさにジャズスタンダードの王道中の王道のナンバーを取り揃えているが、こういった曲達は聴く側のイメージが定着し過ぎていて、演奏者にとっては逆に難しい事も多々あるが、趣向を凝らしたアレンジで新鮮な響きを表現してくれた。
小林が高校時代に師事していた北野タダオ氏のアレンジによる“All the Things You Are”は彼女が以前から大切に弾いてきただけに、この日も師への尊敬の想いを目一杯込めた迫真の演奏だった。
またニューヨークを拠点に活躍するピアニスト、ビル・チャーラップの演奏にインスパイアされた“The Things We Did Last Summer”もリズムセクションの熱量の高い演奏に支えられて活気あるテイクとなり、この曲の新たな魅力を引き出していた。
小林涼介(Bass)、早川紗世(Drums)も安定感のあるビートを刻み、それぞれの役割を全うしていた。この二人の演奏にも今後注目していきたいと思う。このトリオでの再演はもちろんだが、それぞれのミュージシャンが違う編成でどのような演奏を「KOMOREBI JAZZ」で聴かせてくれるのか、それもこれからの楽しみである。
<Member>
- 小林沙桜里 Piano
- 小林涼介 Bass
- 早川紗世 Drums
<Set List>
(1st)
- Have You Met Miss Jones?
- Softly,as in a Morning Sunrise
- Anthropology
- Body and Soul
- On Green Dolphin Street
(2nd)
- Airegin
- All the things you are
- The Things We did Last Summer
- Minha Saudade
(Encore)
Things Ain’t What They Used to Be
小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jpやhttps://thebeatgoeson.jp/、
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima