4枚目のEP、『blue microphone』をリリースし、最近では神戸、大阪だけでなく、和歌山のイベントでも大きなインパクトを残し、東西問わず音楽メディアに取り上げられる事も多くなってきた「SATTU CREW」。怒涛の勢いでシーンに足跡を残していく彼らだが、ワンマンのステージを神戸で聴けるというのは貴重な機会。新しい可能性が広がる「KOMOREBI JAZZ」ならではのプログラムだと言えよう。
ステージの幕開けはインストゥルメンタルによる“Nardis”で始まった。彼らの根底にあるジャズスピリットがまず大胆に提示される。そしてMCのVER$E JACK RIBEROが濃厚なグルーヴの中心に切り込んでいき、思いの丈をマイクにぶつけていく。獰猛なラップと社会情勢を巧みに切り取ったリリックの鋭さが絡み合い、独特の世界観を秒単位で生み出していく。
『blue microphone』からの“Time limit”や“Force”を実際のステージで聴けたのも今回の大きな収穫だった。ストリーミングでは味わえない空気感、生々しさを感じる熱いステージングを踏まえて聴くことによって、楽曲の躍動感が圧倒的に違う。こんな当たり前の事もコロナ禍と隣り合わせの現在の状況では貴重な時間だと思う。
関西だから、地方だから…。もうそんな理由で前進することをあきらめるのは、時代遅れではないか。「B-boy jazz」を信念とし、2018年に結成してからハイペースでライブ出演、EP制作をして自分たちのアイデンティティを声高らかに主張し続けてきた彼らの躍進を見ていると、地域性にとらわれてせっかくの才能が小さくまとまってしまう事がいかに悲しい事であるかを痛感する。
そういった制約、縛りをはねのけて暴れる彼らのエネルギーが同世代のミュージシャンたちへ良い副作用を生み出していけば、彼らの曲名にもあるように“Pandemic”という物々しい言葉が平然と飛び交うこの状況に活路を見出すことができるのでないだろうか。
<Member>
- VER $E JACK RIBERO(MC)
- KOSK(ベース)
- SHIRAS(サックス)
- IW(キーボード)
- Hiroaki Suzuki(ドラムス)
- Shoka (Chorus Support)
<Set List>
(1st)
- Nardis
- ice break (SATTU CREW)
- Barbershop (SATTU CREW)
- Time limit (SATTU CREW)
- Sweet (SATTU CREW)
- Oversize on me (SATTU CREW)
(2nd)
- Stayin’ Alive
- Mind of Rapper (SATTU CREW)
- SATTU (SATTU CREW)
- breakbeats (SATTU CREW)
- Force (SATTU CREW)
- Pandemic (SATTU CREW)
(Encore)
Signal (SATTU CREW)
小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jpやhttps://thebeatgoeson.jp/、
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima