チャーリー・パーカーに影響を受けていないジャズミュージシャンは果たしているのだろうか。あるジャズミュージシャンが一切影響を受けていないと言ったとしても、その本人も気付かずにどこかで必ず繋がっている。それが「チャーリー・パーカー」という唯一無二の存在なのだ。モダンジャズの父、ビバップの祖などパーカーへ賛辞を贈る称号は枚挙に暇がないが、彼がこの世に降り立ってから、2020年はちょうど100年にあたる。アメリカはもちろん、日本各地のジャズスポットでもその偉業を再度振り返る機運が高まる中、「ジャズの街」と公言する神戸がその機会を見過ごすわけにはいかないだろう。

「チャーリー・パーカー」という偉大過ぎるテーマに挑むべく関西の若手精鋭が結集。さらに東京から才気溢れる2人のゲストミュージシャン、アルトサックスの及川陽菜とドラマーの小沼奏絵が招かれた。

パーカーの代名詞と言える曲の1つ、“Donna Lee”から猛烈にブロウするフロントのアルトサックス2人。追従するリズムセクションもさらに2人を煽り立て、パーカートリビュートにふさわしい華やかなオープニングとなった。
“My Little Suede Shoes”や“Star Eyes”といった曲でもパーカーへの敬意を表しつつ、及川、米田が自身の表現力も織り交ぜながら豊かなアルトサックスの音色を存分に聴かせてくれた。特にそれぞれの表現力が発揮されるワンホーンでのフィーチャーで演奏するバラードでは、及川は凛々しさの中に熱い情感を忍ばせながら朗々と歌い、米田はメロディを丁寧に力強くブロウする姿が印象的だった。

リズムセクションもビバップに特化した今回のライブで勇躍。小沼はタイトなリズムキープでサウンドを支えながら、随所に50~60年代のジャズへのリスペクトを感じるフレージングを聴かせてくれた。ドラマーとしての押しと引きのバランスも絶妙で、初の神戸での演奏で大きなインパクトを残した。ピアノの平倉は巧みなバッキングとソロでの爆発力に驚かされた。進境著しいという表現がまさにピタリと当てはまる。ベースの小玉はジャズの薫り立つ渋い音色で強固にバンドのグルーヴを保ち、どんなリズム、テンポでも安定感抜群。このように、フロント、リズムセクション共に素晴らしい演奏だった。

パーカートリビュートしての選曲と共に及川、米田がオリジナルナンバーを聴かせてくれた。ミュージシャン自身が新たな創作活動をすることによって、ジャズという音楽はこれから先、100年、200年…と続いていくだろうし、そうあってほしい。先人へのリスペクトと自己の表現の研鑽を続ける今回のメンバー含めて、新たな才能たちがジャズの歴史を刻んでいくことを強く願う。

<Member>

  • 及川陽菜 (Alto Sax) from Tokyo
  • 小沼奏絵 (Drums) from Tokyo
  • 米田あゆ (Alto Sax)
  • 平倉初音 (Piano)
  • 小玉勇気 (Bass)

<Set List>

(1st)

  1. Donna Lee
  2. My little Suede Shoes
  3. What’s Inside (米田あゆ)
  4. I thought of You feat.及川陽菜
  5. This I dig of You

(2nd)

  1. Stareyes
  2. Milestones
  3. Everything Happens to Me feat.米田あゆ
  4. High Ceiling (及川陽菜)

(Encore)

Anthropology

小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jphttps://thebeatgoeson.jp/
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima