ツートランペットのライブを前に聴いたのは果たしていつだったか、なかなか思い出せないほど、ツートランペットはとても珍しい編成だ。トランペットは言うまでもなくジャズの花形楽器の一つで、その輝かしい音色はワンホーンだけでも目立つ中、ツートランペットというのは、さらに華やかになる反面、両者のコンビネーションは至難の業だ。
今回「KOMOREBI JAZZ」のステージでトランペッターの中田博之は大胆にもその編成で登場してくれた。中田博之は近年、京阪神を中心にストレートに歌い上げるトランペットを聴かせ、積極的にリーダーライブを行い、シーンの中で頭角を表している。温かい音色が魅力の期待のプレイヤーだ。プレイのみならず、今回のライブでも聴かせてくれた“The Same Old Story ”のようなスウィンギーなナンバーなど作曲にも力を注いでおり、演奏と共に彼から生まれる楽曲にも期待したい。
ライブでは、盟友小倉直也とのツートランペットでそれぞれの音を尊重しながら、見事なハーモニーを聴かせてくれた。そのハーモニーはすこぶる耳に心地良く、トランペットという楽器そのものの魅力をよく伝えてくれるものだった。中田、小倉共にスタンダードナンバーのアレンジもなかなか遊び心があって新鮮な印象を与えてくれた。
中田の演奏で特に印象深いのは2ndセットのバラード、“The Nearness of You”。切々と歌い上げるトランペットは抑制が効いて、彼の優しいトーンが際立ち、ドラマチックな旋律を奏でていた。平倉、小玉、坪田のサポートも程良いエッセンスを付け加え、主役を盛り立てていた。
ツートランペットはもちろん、コンボスタイルのインスト主体のジャズライブを聴ける機会は神戸だけでなく、全国的に年々少なくなってきている。これを「時代の流れ」の一言で片付けて良いのだろうか。今回のようなチャレンジができるステージが盛り上がっていくこと、そしてチャレンジするミュージシャン達が「KOMOREBI JAZZ」をその舞台として活用してほしいことを強く願う。
<Member>
- 中田博之 (Trumpet)
- 小倉直也 (Trumpet)
- 平倉初音 (Piano)
- 小玉勇気 (Bass)
- 坪田英徳 (Drums)
<SET LIST>
(1st)
- The Same Old Story (中田博之)
- Desafinado
- Body And Soul
- It’s Easy to Remember
(2nd)
- All The Things You Are
- Two Paper Cups (小倉直也)
- The Nearness of You
- Song For Kenny (中田博之)
(Encore)
The Days of Wine And Roses
小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jpやhttps://thebeatgoeson.jp/、
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima