ジャズシーンだけでなく、さまざまな音楽シーンで活躍するサックスプレイヤーの古川翼。オーセンティックなジャズナンバーではメロウな音色を聴かせ、コンテンポラリージャズも柔軟に表現。ファンクやR&Bでも熱いサウンドを届けてくれる。
各セットのオープニングで披露してくれたインストナンバーはステフォン・ハリス、ケニー・ギャレットといった現代を代表するアーティストの楽曲を取り上げ、タイトな演奏で魅了してくれた。
今回、フィーチャーシンガーとして、注目度高まる桑原睦実を迎えたライブは、古川率いるバンドの好演も相まって、桑原の底知れぬポテンシャルの高さを目一杯聴かせてくれるものとなった。
歌いだしから抜群の声量で歌い上げ、広いFISH IN THE FORESTでも隅々まで行き届く桑原のパワフルな歌声。以前から彼女の高い実力は重々知っていたが、改めてその類まれなる歌声の素晴らしさに驚かされた。ダニエル・シーザーがH.E.Rを迎えたヒットナンバー、“Best Part”を取り上げていたが、リラックスした中にも、健気で確かな力強さを持った温かみある楽曲の世界観を見事にグレードアップさせていた。
2ndセットで圧巻だったのは、桑原のオリジナル、“Everything’s Gonna be Okay”から、アレサ・フランクリンの名唱で有名な“(You make me Feel Like)A Natural Woman”での畳みかけるような熱唱だ。“Everythig‘s~”では桑原の作詞による歌詞の言葉ひとつひとつに気持ちが乗り、胸に迫ってくる歌を聴かせ、極めつけの“(You make me Feel~)”では最後まで熱く迫力ある歌声を轟かせてくれた。魅力あるシンガーは数多いが、彼女の活躍はその中でもひと際増える事だろう。
ピアノ、キーボード共に華麗な鍵盤さばきを聴かせる西江、2回目の出演となった小林は今回エレクトリックベースでも堅実にリズムを支えていた。窪のドラミングは切れ味鋭く、幅広い楽想の選曲にもしっかり対応。初共演の組み合わせもあったが、相性の良いバンドだと感じた。
「KOMOREBI JAZZ」に行けば良質な音楽が聴ける。今回もその実感が確かなものであることを噛み締めた夜だった。
<Member>
- 古川翼 (Sax)
- 桑原睦実 (Vocal)
- 西江花梨 (Piano, Keyboard)
- 小林涼介 (Bass)
- 窪龍樹 (Drums)
<SET LIST>
(1st)
- Chasin’ Kendall
- Disconnected
- I can’t Help it
- Best Part
(2nd)
- Native Tongue
- When you Hold me
- Tell me a Bedtime Story
- Everything’s Gonna be Okay (桑原睦実)
(Encore)
(You make me Feel Like)A Natural Woman
小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jpやhttps://thebeatgoeson.jp/、
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima