ライブ当日、日中あいにくの天気だったが、開演時間が近づくと雨は止み、澄みきった空気広がる秋らしい夜空に。なんだかまるで空模様が、Saigenjiさんのステージを我々と共に楽しみに持っていたのではないかと思うほど、絶妙なタイミングで過ごしやすい穏やかな気候になった。
Saigenjiさんがステージに登壇すると、舞台の晴れやかさがさらにグッと増す。Saigenjiさんの力強い歌声、ギターの繊細な響きが広い会場に広がっていく。ライブの幕開けはミルトン・ナシメントの名曲、近年ではエスペランサ・スポルディングも取り上げた“Ponta De Areia”、沖縄民謡の“てぃんさぐの花”、そして自身の“海のそばに”をミックス。ライブ早々にブラジル、沖縄、そして神戸と海にゆかりのある地を繋ぐような選曲の妙に唸らされた。ステーヴィー・ワンダーの“Golden Lady”、カーペンターズの“Close to You”も原曲の持つ魅力とSaigenjiさんのナチュラルなエネルギーが合わさり、さらに魅力的な旋律を奏でていた。
2ndセットも自身のオリジナル、“弧動”や“Another Wind(Overture)”や、アントニオ・カルロス・ジョビンの“Luiza”など、オリジナル、ジャズ、ボサノヴァと多彩なジャンルから取り上げられる名曲たちがライブでの躍動感も相まって、瑞々しい魅力を放っていた。
Saigenjiさんの幅広い音楽性を体現する“Music Junkie”は偉大なる音楽の先人たちへのリスペクトと、その音楽をこれからも受け継いでいく強い意志を感じる彼のエネルギッシュなメッセージが胸に響いた。
さらにアンコールではアカペラとフルートでベネズエラの吟遊詩人、シモン・ディアスが残した名曲、“Tonda de Luna Lleana ~満月のトナーダ~”を披露。雨の上がった神戸の夜空にどこまでも染み渡っていくようなSaigenjiさんの祈りにも通じた歌声が情熱的なステージを優しく冷ますように終演。今後も良質な音楽を発信していく「KOMOREBI JAZZ」のステージに音楽の持つ大きな力を刻んでくれた。
<SET LIST>
(1st)
- Panta de Areia~てぃんさぐの花~海のそばに
- ハミングバードワルツ
- Golden Lady
- Close to You
- Dance of Nomad
- Heatbeat
- Vento ~Corrida de Jangada
(2nd)
- 弧動
- 台風の街
- Another Wind(Overture)
- Luiza
- Desafinado
- But Beautiful
- Sunflower
- Music Junkie
(Encore)
Tonada de Luna Llena ~満月のトナーダ~
小島良太(こじまりょうた)
1986年生まれ。
兵庫県神戸市出身在住。
ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。
神戸市「ジャズの街神戸」推進協議会メンバー。
Webでは、 http://kobejazz.jpやhttps://thebeatgoeson.jp/、
紙媒体では「ジャズ批評」、「JAZZ JAPAN」等、ジャズ専門誌に寄稿中。
Twitterアカウント @Voyageharima